クミン
カレーパウダーの主原料となる。少々の辛味と強い芳香を持つ。セリ科の一年草で、乾燥させた種子を用いる。インド、北アフリカ、ヨーロッパなどで生産されているが、産地により香味が著しく異なる。インドではジーラと呼び、料理に欠かせないスパイスのひとつ。地中海沿岸原産で古代から栽培されており、紀元前16世紀のエジプトの医術書にすでに記録されている。
ブラックペッパー
東南アジア、南米でも産するが、辛味の質や芳香はインド産が最も優れている。最高級品は原産地であるマラバー産のもの。つる性の植物で、初夏に黄緑色の実を房状に実らせる。これを未熟な状態で収穫し、天日干しすると黒くなりブラックペッパーとなる。完熟果を浸水し、発酵させて皮を取り除いたのち天日干ししたものが、ホワイトペッパーとなる。ブラックペッパーの方がより刺激が強い。仕上げに使うと芳香が生きるが、辛味を出したい場合は下ごしらえや調理中に加えるとよい。
カレーリーフ
インド原産のミカン科灌木、カレーツリー(和名は大葉月橘〔オオバゲッキツ〕)の葉。炒めると独特の青い草のような香りがする。南インド、スリランカ料理に多用。乾燥すると香りがかなり弱まる。日本では生は入手困難。
コリアンダー
乾燥させた種子、生の葉を用いる。クミン同様、古くからスパイスとして使われており、インド料理に欠かせない。地中海沿岸原産、セリ科の一年草。シードはレモンとセージを合わせたようなさわやかで甘い香りが特徴。生の葉はカメムシを思わせる独特の香り。中国語では香菜、タイ語ではパクチという。ちなみに、コリアンダー(英語)は、カメムシ目の昆虫である南京虫を表すギリシア語=korisに由来する。
マスタードシード
黒、白、黄と三色ある。インドでは、辛味の刺激委が強い黒が好まれる。特に南インドでは盛んに使われている。料理の初めに、粒のまま油とともに鍋に入れ、ぱちぱちと弾け始めるまで熱してこうばしい香りを出す。
カルダモン
サフランに次いで高価なスパイス。産地と気候に品質が大きく左右される。原産地インドのマラバール産が最高級品。さやの中に小さく黒い種子が15~20粒ほど入っており、この種子が香る。樟脳に似た芳香でわずかに刺激臭もある。
ターメリックパウダー
和名はウコン。ショウガ科の多年草の根茎。世界最大の生産国はインド。ゆでてから乾燥させ、粉に挽く。主に着色を目的として用いる。カレーの黄色は、このスパイス由来。土臭い苦みがあるので、入れすぎに注意が必要。
レッドペッパー
南米原産。15世紀末、コロンブスによってはじめて西洋に伝えられた。熱帯から温帯の幅広い範囲で栽培されている為変種が非常に多く、100種近くあると言われる。変種の中には、辛くない品種もある。辛味成分はカプサイシン。使用料を増やすほどに辛くなる。収穫して1年以上たつとビタミンCが減少し、渋みが出る。完熟前は緑色でグリーンチリとよばれる。インドでは完熟を乾燥させて使う。ピッチーファーはタイ産で大きく辛味は少ない。ピッキーヌーもタイ産だが、小ぶりで非常に辛い。
フェヌグリーク
ヒンディー語ではメティという。豆科の一年草の種子。インドではクミン同様、スタータースパイスとして、料理のはじめに油に入れて香りを出す。油で熱すると焦げた砂糖やメープルシロップのような苦みのある香りがたつ。
シナモン
スリランカ産のものと、そのほかの地域で採れるカシアがある。同じクスノキ科の常緑樹で香りが近く、どちらもシナモンという名前で流通するが別種。インドではより香りが強いカシアが好まれる。一般的には、木の皮状のものをスタータースパイスとして用いる。パウダーは香りを補う目的で仕上げ間際に加えることが多い。
アジョワンシード
セリ科の一年草の種子。西アジア原産で非常に強い香りを持つ。ナン生地にのせて焼いたり、豆粉の揚げ物に練りこんだり、油で炒めて根菜料理に使ったりする。そのまま水とともに飲むと便秘や二日酔いに効く。
アムチュール
未熟なマンゴーの果肉を天日干しして乾燥させ、粉末状にしたもの。ヨーグルトやライムなどと並んで酸味付けにつかわれる。また、チャットマサラという酸味の強いスパイスを合わせたミックススパイスの主原料となる。
カスリ・メティ
フェヌグリークの葉。インドでは野菜として食されることも多い。発芽後、出た二枚葉を摘みとってサラダにしてもよい。バターチキンマサラに加えると風味が増し、コクがでる。
フェンネル
南欧、地中海原産のセリ科の多年草。日本ではウイキョウ。アニスに似た甘い香りと少々の苦みに加え、若干樟脳のような香りもする。癖のある香りなので万人受はしないが、カレーに特徴を出すには役に立つ。日本ではパウダーが市販されているが、インドの家庭ではシードをから煎りし、挽いて使うことがほとんど。インド料理店では、お客が口直し用にとって食べられるよう、小さな器に入れてレジ横に置いているところが多い。
クローブ
クローブはフトモモ科の常緑樹の花のつぼみ。開花前のものを収穫し、乾燥させる。非常に強い香りを持つが、開花してしまうと香りが弱くなり、商品価値がなくなる。日本名は丁子。インドでは、ホールはスタータースパイスとしても用いられる。体を温める働きを持ち、ガラムマサラの材料ともなる。バニラに似た甘い香りに特徴があり、くせの強い肉の臭みけしや、ケーキやプディングなどの菓子類につかわれる。
サフラン
世界で最も高価なスパイス。アヤメ科の多年草の雌しべのみを乾燥させてつくる。開花期が2週間程度と短いので、収穫できる時期もほんのわずか。水や湯に浸すと鮮やかな黄色い色素が溶け出す。方向は強くはないが独特。
パプリカ
コロンブスが南米から持ち帰ったカプシカムペッパー(トウガラシ類の総称)の辛くない変種。ハンガリー原産。辛味はほとんどなく、香味もかなり弱い。主に着色を目的として用いられる。油によく溶ける性質を持つ。
ベイリーフ
クスノキ科の常緑樹である月桂樹の葉。生は少々青臭い香りがする。乾燥させると青臭い香りが揮発し、さわやかさと少しの苦みが感じられる香りが残る。肉の臭みけしには、乾燥させたもののほうがよい。
ナツメッグ
インドネシアのモルッカ諸島などをはじめとする東インド諸島原産。高さ16メートルにも達する常緑樹の種子の中に入っている仁がナツメッグ。種子の周りを覆う仮種皮はメースと呼ばれており、これもスパイスとしてつかう。ナツメッグはシナモンにも似た甘い香味を感じるが、あわせて苦みもあるのが特徴。羊肉の臭み消しにつかわれるほか、製菓や製パン、市販のソースの香りづけにも用いられる。ホールは非常にかたい。
ガラムマサラ
インドを代表するブレンドスパイス。料理の仕上がり間際に香りづけのために加える。家庭やレストランによって配合は様々だが、黒コショウ、ベイリーフ、クローブなど体を温める作用のあるスパイスを合わせてつくる。
チャットマサラ
チャットは酸っぱい、マサラはスパイスの混合物のこと。アムチュールを中心にポメグラネート(ザクロの種)などを加える。炒めものや揚げものにふりかけても、カレーの調味料としてもつかえる万能ミックススパイス。